ピラティスのクラスで使われている『スパインコレクター』というツールを知っていますか? 背もたれが倒れた座椅子のような、横からみるとクジラの形のような……。

Spine Corrector=背骨を正すもの

このスパインコレクターは、ピラティスのエクササイズの際に使われているツールです。このツールがどのように使われているか、スタジオ・ヨギーのピラティスインストラクター、ヒロコ先生に聞いてみました。

──スパインコレクターは、どうやって生まれたのでしょう?

「ピラティスの考案者であるジョセフ・ピラティス氏が作りだしたものです。ピラティス・エクササイズは1920年代に開発されているので、このツールも歴史があります。 “Spine”=背骨、“Corrector”=正すもの・治すもの、とあるように、身体の骨格の中心である背骨を正しながら、全身を鍛えるためのエクササイズツールです。

人は大人になると左右差が顕著になります。カバンをいつも片方にかけている、脚を組むときいつも同じほうを上にしている、利き手の使い方など、日常生活で左右差が出て、筋力の強い方に引っ張られます。なので、こういったもので左右対称に体を使うことで、背骨を正しながら整えていくのに、とても有効なのです。」

──そのカーブに沿って仰向けに寝るだけでも、気持ちよさそうですね。

「そうですね。でもピラティスのエクササイズでは、ただ寝転がってお休みするシーンはなくて、ストレッチもしながら筋力をアップするための動きを必ずします。」

猫背の方にも、反り腰の方にも使えるツール

──スパインコレクターは、どういう人が使うとよいでしょうか?

「特に、猫背の方にオススメです。スパインコレクターに仰向けになると、平らなマットに寝転ぶのに比べて、腕の重さで胸の筋肉が開き、ストレッチされます。その姿勢でエクササイズをすれば、可動域が広がった状態で、身体を大きく動かすことができます。通常マットで行うエクササイズを、スパインコレクターで行うと、より効果的になります。

また、反り腰の方にも効果的です。たとえば、必要以上にマットと腰の間に隙間が空いている状態で仰向けから重たい頭と胸を持ち上げようとすると、反り腰で伸びてしまっている腹筋が使えなく、それを補うように小さな首の筋肉に頼って頭を持ち上げようとして首に過剰な負担をかけてしまいがちなのです。仰向けから頭と胸を持ち上げる時に「首が痛い」という経験がある方はその可能性が高いです。なので、このツールで背骨をカーブに沿わせようとするだけで腹筋にちゃんと効いて安全にエクササイズができるはずです。」

エクササイズにごまかしが効かないツール

──補助ツールとして効率的に使えそうですが、ハードでもありますね。

「身体と床の接地面についてですが、マットだと“平面”であるのに対し、スパインコレクターはカーブがあるため “曲面”になります。実は、このおかげで、エクササイズにごまかしが効かないのです(笑)。

たとえばロールアップでも、平らなマットでは勢いをつけたり、太ももの筋肉も使ったりすれば、上半身は起き上がれなくはないですよね。でも、スパインコレクターだと、まず第一に背骨を反らせた状態から起き上がるので可動域が増え、腹筋がさらに必要になります。また骨盤の下に溝があり、勢いで上がろうとするとそこにお尻がずり落ちるためうまく上がれず、(マットのロールアップでも重要な正しい腹筋の使い方で)上に体を引き上げるしかなくなります。このようにスパインコレクターは正しい体の使い方も教えてくれます。」

──鍛えたい部分を、ピンポイントに集中して効かせられそうですね。

「そうですね。スタジオ・ヨギーのクラスでも、スパインコレクターを使ったセミプライベートのクラス(3名限定)をやっていますが、30分のクラスにしています。みなさん、『30分でもう限界!』とおっしゃっていて、効果を十分に感じていらっしゃいますね。」

ピラティスのツールは、エクササイズをより効果的にでき、自分が鍛えたい部分に意識を向けるのにとても便利です。特にこのスパインコレクターは、「ごまかしが効かない!」という点で、短時間集中でのエクササイズに向いていそうです。

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編集 竹内 まり子