瞑想は、歯磨きのように習慣化することで、心を整え、自身の味方になるツールとなりえるとよく言われています。
「人生の中でよい時期も悪い時期もあり、誰でも大変な時期があると思います。(中略)人生の大変なとき、試練の時に、がむしゃらにがんばって自分を追い込むのではなく、自分を助けてくれるツールとして瞑想をおすすめしたいです。」と、ヨガインストラクターのマリコさんは著書『毎日たった10分の瞑想が強い心と体をつくる』(彩流社刊)でお話ししています。「瞑想を実践して、習慣化していきましょう。やるだけやって、あとは手放すことです。」




瞑想をするとどんな変化があるのでしょう。
瞑想をすると起こる10のよいことを、この本から紹介させていただきます。

1.ストレスから解放される

現代人はストレスフルで「交感神経」が優位になる状態が長くなりがちです。体が常に「交感神経」優位な状態になると、「副交感神経」が優位になるべきときに優位にならない、といった自律神経の乱れを生じます。その影響で頭痛、肩こり、腰痛、便秘、消化不良、高血圧、耳鳴りなどの体調不良も起こりやすくなるといわれています。
(中略)
瞑想を定期的に3か月以上実施した人では、ストレスを受けたときの「交感神経」の働きが抑制される傾向があることがわかりました。瞑想は、呼吸を整え、脳をリラックスさせることができます。さらに瞑想を続けていくと、自律神経のバランスを整える効果もあるのです。

2.心と体の健康に役立つ

ヨガの哲学は、人が幸せに生きるための智慧から生まれました。(中略)本質的な幸せは自分の内側にあると考えるのがヨガ哲学です。このヨガ哲学を理解し、実践するため、自分の内側に意識を向ける手法として瞑想を行うようになったのです。その瞑想を行う場合には長時間、快適に座っていられるような強く安定した肉体をつくるために、ヨガのポーズを実践するようになりました。

また、心を落ち着かせて、内側に意識を向けるためのテクニックとして呼吸法が生まれました。適切な呼吸法を行うことで「プラーナ」と呼ばれる「気=生命エネルギー」を体に取り込むことができると考えられています。
(中略)呼吸法を行うと、脳に酸素が十分に行き渡り、神経が落ち着き、心を穏やかにする効果があります。また深い呼吸によって呼吸に関連する筋肉を動かし、内臓に適度な刺激を与えるため、肉体的にも活力を与えると考えられています。
ヨガで考える健康は、肉体レベルだけでなく、精神(心)の健やかさを重視しています。精神、つまり心の状態と、体内のエネルギーの流れは密接に結びついていると考えられています。そのため、瞑想の前にポーズで体を整え、呼吸でエネルギーを整えることで、心にポジティブな影響を与えることができるのです。

3.人間関係がスムーズになる

瞑想中にさまざまな思いが沸き起こってきても、ただそういう思いが自分の中からできた、と受け止めるだけで、深追いしない練習をします。さらに瞑想を習慣化して続けていくと、自分の心の癖にも気づくようになります。そして自分の感情に距離を置くことができ、相手にも寛容になることができます。

日常の人間関係の中では、ときには言いたくないこと、伝え難いことを相手に伝えなければいけない場面もあるでしょう。そんなときは、相手の立場や役割にとらわれて、そのときの自分の感情だけで判断しないことが大切です。このようにゆとりをもった視点を持つことで、相手に愛を持った伝え方ができるようになるのではないでしょうか。
瞑想によって心の在り方が変わると、人間関係にも変化が訪れるかもしれません。

4.仕事や勉強の効率アップ


「マインドフルネス瞑想」が、なぜパフォーマンスを上げるといわれているのでしょう。たとえば、スポーツ選手が厳しい練習を行っても、本番で必要以上に緊張が高まり、自分の力を発揮できずに終わってしまうこともあります。またリラックスしすぎてもその実力は発揮できないでしょう。緊張とリラックスのバランスが取れているときに集中力が高まり、結果を出すことにつながるのです。
(中略)
瞑想を続けることで、だんだんとリラックスしながらも眠らずに体に意識を集中させることができるようになり、バランスのよい集中力を培うことができるのです。
(中略)
特に呼吸に意識を向けて、その状態に集中することが、考え事を減らし、集中力を高める手助けになることでしょう。
仕事や勉強でもよい集中ができていると効率がアップし、自分の本来の力を十分に発揮することができるはずです。

5.アンチエイジング

アンチエイジングとは、ヨガの視点では、心身共に生命力を高めることです。それは、体に「気=プラーナ」を巡らせ、体の活力をアップすることを意味します。脳を含めて体の機能は使わずにいると退化してしまいます。その年齢に応じて最大限、脳や体の機能を使えるよう、瞑想も一役買うことができるのです。

医学的には、老化にはテロメアと呼ばれる染色体の一部分が関係しているといわれています。テロメアには染色体の末端を保護する役目があり、細胞分裂のたびに短くなります。そして一定以上短くなると細胞の老化を引き起こします。2011年に発表された、カリフォルニア大学デイビス校の研究チームが行った瞑想についての研究によれば、瞑想をする人ではこのテロメアの長さに影響を及ぼすテロメラーゼの活性が優位に高くなっていることが分かりました。つまり、瞑想はテロメアが短くなることを抑制し、免疫細胞の寿命によい影響を及ぼすことが科学的に明らかにされたのです。

ここまで読んでいただきありがとうございます。短い瞑想のプログラムをお届けします。気分転換にどうぞ。



6.リラクゼーション

人はたえず考えごとをしています。自分では、何も考えていないように思っていても、無意識の領域で脳は働いていて、いろいろな想念や雑念が浮かんでは消えているのです。これをデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)といいます。これはなにかが起こったらすぐ対処できるように、脳がいわばアイドリングしている状態なので、このときの脳は実はとても疲れやすいのです。一方、何かひとつのことに集中しているときは、それに関連した領域の脳に血流が集中します。

瞑想ではひとつのことに集中することで、普段使われていない脳の領域を活性化させ、他の部分を休ませることができます。いわば、雑念を抑えて脳を休め、それが脳のリラクゼーションになるのです。

7.切り替え上手になれる

瞑想は、心に日々積もっていくさまざまな感情や思いを整理していくことができます。常に同じことが気になる、頭から離れない、そんなときも、そのことをいったん心のどこかに収めておく練習ができるのです。また瞑想を習慣化することで、自分の感情と距離をおいたり、客観視できるようになるため、ものごとを引きずらないようになります。

さらに、自分が集中したいときに、いつでも集中力を発揮することもでき、自分自身で心のコンディションを整えることが可能になります。つまり、おかれた状況に振り回されるのではなく、自分自身でコントロールできるようになるのです。

8.快眠

現代人は、特に大人になると体を動かす機会が減る一方で、頭を使う時間が多くなります。夜でも長時間パソコンで仕事をしたり、寝る直前までスマホを眺めたりなど、脳は常に活動状態にあります。この状態では交感神経が優位になりやすく、休息の副交感神経が優位になりづらい状態になります。
(中略)
ヨガのポーズで体を意識的に動かしてほぐすことは、血流やリンパの流れを促し、疲労からの回復を促します。また呼吸法や瞑想は脳を休めることにつながり、体の緊張をゆるめてリラックスさせます。瞑想を習慣化することで、夜、副交感神経を優位にし、眠れるからだづくりができるようになるのです。

9.五感が冴えて豊かになる

私たちに備わっている五感のうち、一般的に、視覚がもっともたくさんの情報を伝えることができます。瞬時に多くを伝えられるということは、それだけ刺激が強いのです。その次に多くの情報を伝えられるのは聴覚です。特に現代の日常生活では、視覚と聴覚に入ってくる刺激が以前にくらべとても多くなっています。この大量に入ってくる刺激に対して、脳が反応し、情報を処理しようとして思考が優位に働きます。一方で、その他の感覚は鈍くなります。

瞑想の最初のステップとして、目を閉じて呼吸に意識を向けることは、忘れられていた感覚を豊かに使う練習になります。それは優位になりがちな思考から離れ、フラットな視点からあるがままを見る練習にでもあります。

体の感覚などを研ぎ澄ませる練習を繰り返し行うことで、普段使っていない感覚を司る脳の部分の結構がよくなり、五感が冴えるようになるのです。

10.自分の本質、ありのままの幸せに気づく

ヨガ哲学では、人は本質的に満たされていると考えます。たとえば自分の心を湖に例えてみましょう。湖の底には自分の本質がある。外界と接している水面は、風が吹いたり、雨が降ったりすると、揺れたり、濁ったりします。このような水面のさざ波、つまり、自分の感情に左右されることなく、湖の底に変わらず有り続ける自分の本質に目を向けるのが、瞑想です。

瞑想をやっても、最初のうちは、本質的に満たされているということが実感できないかもしれません。しかし瞑想を続けるうちに、だんだんと湖の水面が清らかになったり穏やかになったりすることで、湖の底にあるすでに自分が持つ輝きに気づくことができるのです。

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毎日たった10分の瞑想が強い心と体をつくる』には、食の瞑想、動く瞑想、オフィス瞑想、歩く瞑想、などなど、ただじっとして行う瞑想だけではなく、そのときその瞬間に意識を集中させる瞑想がいくつも紹介されています。取り組みやすいものから選んでいってみてはいかがでしょうか。

興味深いお話しがあり、ふだんどのような食事をしているか、どんなものを食べたいと欲しているかでその時々の心の状態がわかるともいわれています。yoggy airの音声コンテンツ「ゆるトーク 食と感情について」を、stand.fmで聴くことができます。

このなかでタダヒコ先生がお話ししていますが、つい、なにか効果や目的をもって瞑想に臨みがちですが、瞑想する瞬間に限らず、実は日常生活を整えていくことが、より瞑想に入りやすくなるともいわれています。耳が痛い話ですが、日常生活が不規則だったり、不摂生だったりすると、体調や精神面にも影響しますね。瞑想が日常の延長にあることもお忘れなく・・・。